今を生きる勇気|『限りある時間の使い方』で見直したFIRE後の時間の使い方
FIRE前でも、そしてFIRE後の今でも強く刺さった一冊。読み終えて気づいたのは、ぼく自身が長いあいだ「未来の準備」に明け暮れて、“いま”を味わい切れていなかったという事実でした。
なぜ今この本が刺さったのか
オリバー・バークマン著『限りある時間の使い方』は、いわゆるテクニック本ではなく、時間とどう向き合うかを問い直す本です。FIREをして自由時間が増えた今でも、完全に「現在」に集中できているかと問われれば、自信はありません。投資・ブログ・家庭菜園・健康管理・サウナづくり…どれも未来の自分のための行動である一方で、「いまの体験」をちゃんと味わえているかが曖昧になる瞬間があるからです。
人は“未来の準備”で忙しすぎる
本書が指摘するのは、ぼくたちが人生の多くを「次の段階の準備」に費やしてしまうこと。小学生は中学生のために、中学生は高校のために、大学に入れば良い社会人になるために、親になれば子どもの将来のために——。いつの間にか“いま”が希薄になり、未来の不安に駆動されたタスクで毎日が埋まっていく。FIRE前のぼくはまさにこの路線を全力疾走していましたし、FIRE後の今も油断するとすぐ戻ってしまう危うさがあります。
心に残った一節:「いま楽しいか」も同じくらい大事
9歳の子どもに暴力的なゲームをさせていいかどうかを考えるとき、
わたしたちは「将来暴力的な大人になるかもしれない」と心配する。
でも本当は、子どもにとっていまそれが楽しいかどうかも、同じくらい大事な問題だ。— 『限りある時間の使い方』より(短い引用)
親としてギクリとしました。子どもがゲームに夢中だと「勉強した方が…」と口を出したくなりますが、その多くは将来の不安に突き動かされた反射。子どもがいま目を輝かせている事実を、ぼくはちゃんと受け止められているか。未来を思う気持ちと同じくらい、現在の幸福にもピントを合わせたい——そう思わされました。
FIRE後の落とし穴:自由時間は「思考の迷路」にもなる
時間が増えると、むしろ「どう使うべきか」を考えすぎて身動きが鈍ることがあります。完璧な使い方を探してしまい、結果として行動が小さくなる。そんなときは、プロセスを味わえる行動を選ぶのが効きました。朝のコーヒーを丁寧に淹れる、子どもと10分だけ将棋を指す、畑に1本だけ苗を植える。小さくても「いま体験できる具体」が、未来の不安に偏った心を現在へ引き戻してくれます。
今日からできる「いまへ戻る」3つの習慣
① 予定に“余白”をカレンダー登録する
何もしない時間を予定化。埋めない勇気が、焦りを鎮めます。
② 3呼吸だけ、体感へ注意を戻す
思考が暴走したら、呼吸の出入り・足裏の感覚など「身体のいま」へ。
③ プロセス重視のタスクを1つ混ぜる
結果より体験が主役の行動(読書・散歩・手仕事)を毎日に仕込む。
子育ての視点:未来の準備と「いまのご機嫌」の両立
勉強も運動ももちろん大切。ただ、子どもが夢中で笑っている時間は、将来の土台になる自己効力感の源泉でもあります。禁止・制限だけでなく、「時間や内容のルールを一緒に決める」「終わったら感想を話す」といった伴走に切り替えることで、未来と現在が対立しにくくなりました。
不安は消せない。ならば共存の設計を
将来の不安は消し去れません。だからこそ、不安と同居しながらも現在を味わえる生活設計が要る。ぼくの場合は、FIRE後に考えた豊かさと生き方で触れた通り、家族時間・健康投資・小さな楽しみ(コーヒーや読書)を生活の芯に据えることで、バランスが取りやすくなりました。また“叶える投資” 妻のアトリエ × 庭サウナのように、将来の楽しみもいまのワクワクへ変換し、過程を楽しむ工夫をしています。
連載予告|この本から学ぶ「時間の哲学」を続けて深掘りします
本書はまだまだ奥が深いので、次回以降は以下のテーマを1本ずつ掘り下げます。
- 決められない病:選択肢の多さと満足度の関係
- 完璧主義の罠:完成より公開、量が質をつれてくる
- 死と有限性:有限を自覚すると、優先順位はどう変わるか
- デジタル・ミニマム:注意資源を奪うものとの付き合い方
FIREは「お金の自由」の先にある、時間の自由の使い方が本番。連載で一緒に整えていきましょう。
まとめ:未来のために、いまを味わう
- 人は無意識に「未来の準備」に偏りがち
- 子育ても自分も、現在の幸福を同じ重みで扱う
- 小さな「体験ベースの行動」を毎日に仕込む
- 不安は消せない。だから共存設計を
有限だからこそ、いまを大事に。FIRE後の暮らしに、おだやかな濃さを。


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