「返事がない。ただのしかばねのようだ。」
ネットの海を漂っていれば、人生で一度は見かけたことがあるこのフレーズ。RPGの金字塔、ドラゴンクエストのあまりにも有名なセリフです。でも、お恥ずかしながら告白します。私、今の今までドラクエを一度もプレイしたことがありませんでした。
アラフォー子持ちで、サイドFIREという生活を選択し、ようやく自分の時間を自由に使えるようになった今。私が手を出したのは、最新の超大作ゲームではなく、かつて誰もが通り過ぎていった「王道中の王道」でした。
実際にやってみて分かったのは、これが単なるゲームではなく、今の僕にとって必要な「自分を取り戻す儀式」だったということです。
1. 「変わらないこと」の凄みに、今さら気づく
ドラクエといえば、シリーズを通してほとんど変わらない戦闘システムが特徴です。「戦う」「呪文」「逃げる」というコマンドを一つずつ選ぶ、あのクラシックなスタイル。
正直に言うと、プレイする前は「今の時代にそれは退屈なんじゃないか?」と思っていました。今はもっとアクション性が高くて、グラフィックが映画のように綺麗なゲームがいくらでもありますから。でも、いざコントローラーを握ってみると、その考えは180度変わりました。
変わらないシステムは、裏を返せば「完成され尽くしたインターフェース」なんです。自分のペースでじっくり考え、一手ずつ物語を進めていく。リメイク版で少し綺麗になったとはいえ、どこか素朴なグラフィック。だからこそ、その裏にあるドラマチックなストーリーや、骨太な世界観がダイレクトに心に響いてくる。
「あぁ、王道が王道と言われる理由は、ここにあったのか」と、40歳にしてようやくその本質を突きつけられた気分でした。
2. 「あ!これ進研ゼミでやったところだ!」現象
プレイを始めて驚いたのは、街の人の何気ない会話やイベントの中に、ネットで100万回こすり倒された「ネタ」がゴロゴロ転がっていることです。
「世界の半分をお前にやろう」
「昨晩はお楽しみでしたね」
「パフパフ」
初プレイなのに、なぜか懐かしい。初めてなのに、「これがあの元ネタか!」というアハ体験が止まらない。まるで、インターネットの共通言語の源流を遡っているような、不思議なワクワク感がありました。
特に「世界の半分」という悪魔の誘いに直面した時。若い頃の自分なら迷わず正義を貫いたはずですが、少し社会に揉まれ、資産運用やFIREなんて言葉を知った今の自分は、「それも一つのリタイアの形か……?」なんて一瞬だけ不埒な考えがよぎったりして(笑)。そんな自分自身の変化に気づけるのも、大人になってから遊ぶ面白さかもしれません。
3. 子供との接点、そして「過去の自分」の救済
この冒険は、私一人だけのものではありませんでした。
小学生の子供たちが、僕がプレイする画面を横でじっと眺めているんです。最新の綺麗なゲームに慣れているはずの彼らが、「パパ、次はあっちだよ!」「その魔法使ってみて!」と一緒に盛り上がっている。
ドラクエが持つ「わかりやすさ」と「ワクワク感」は、世代を超えて共通なのだと実感しました。子供との新しい接点が、こんな古いゲームから生まれるなんて。サイドFIREをして、家族との時間を大切にしたいと考えていた私にとって、これは最高の副産物でした。
そして何より、ドラクエをプレイしている時間は、どこか「過去の自分」を慰めているような感覚があります。
子供の頃、勉強や部活、友達付き合いに忙しくて、ゲームをする時間が限られていたあの頃。親に「ゲームは1時間まで!」と怒られ、やりたくても手が届かなかったあの名作たち。
40代になった今、自分の稼いだお金でハードを買い、自分の意思で作った時間で、誰にも邪魔されずに伝説の続きを追いかける。これは、かつての「やりたかったけれど、できなかった自分」を迎えに行き、抱きしめてあげるような、とても贅沢で癒やされる時間なのです。
4. 「何のためにもならない」に、命を燃やす
大人になると、どうしても「コスパ」や「自己成長」「お金に繋がるかどうか」で物事を判断しがちです。本を読むならビジネス書、動画を見るならニュース解説。でも、そうやって常に自分をアップデートし続ける生活は、時に心を削ります。
今の私にとって、ドラクエをやる時間は「何のためにもならない時間」です。
これをクリアしたからといって、年収が上がるわけでも、新しいスキルが身につくわけでもありません。でも、これこそが「自由のパスポート」の本当の使い方ではないでしょうか。
「ただ、自分が楽しいからやる」
「ただ、家族と笑いたいからやる」
そんな純粋な好奇心だけで動ける時間は、何よりも私を豊かにしてくれます。
おわりに
40代で始めるドラクエ。それは、遅すぎたわけではなく、「今だからこそ最高に楽しめる」タイミングだったのだと思います。
もし、皆さんのクローゼットの奥にも、かつてやり残した「青春の忘れ物」があるなら、今からでも遅くありません。ぜひ、それを回収しに行ってみてください。
そこには、今のあなただからこそ気づける感動と、あの頃のあなたがずっと待っていた、素敵な物語が眠っているはずですから。
さて、そろそろコントローラーを握る時間です。
私の伝説は、まだ始まったばかり。今夜も、世界の平和を守りに行ってきます!


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