【未来予想図】10年間の「親業」にひと区切り。もうひとつの卒園式が教えてくれたこと

FIRE

はじめに:予期せぬ欠席と、小さな落胆
この春、我が家の末っ子が保育園の卒園を迎えました。
長男の時から数えれば、足掛け10年。毎日の送り迎え、泥だらけの着替え、季節ごとの行事……。僕たち夫婦の日常の真ん中には、常にこの保育園がありました。

しかし、待ちに待った卒園式直前、予期せぬ出来事が起こります。
この季節特有の、急な発熱。
看病をしながら、「これもまた、後になればいい思い出になるさ」と自分に言い聞かせつつも、心のどこかでは「せっかくの晴れ舞台なのに」という残念な気持ちが拭えませんでした。

結局、当日になっても体調は万全とはいかず、僕たちは本番の卒園式への参加を断念することになったのです。

園からの温かな提案:5人のための「もう一度」
「残念だったけれど、仕方ないね」と夫婦で話し合っていた矢先、園から思いがけない連絡をいただきました。
「体調不良で欠席してしまった子たちのために、もう一度、卒園式を行います」

聞けば、我が子を含めて同じように欠席せざるを得なかった子が5人ほどいたそうです。
園の方では「証書の授与式を行います」というお話だったので、僕たちはてっきり、事務所や小さな教室で形式的に書類を受け取って終わるものだと思っていました。

「当日は写真を撮りますので、ぜひフォーマルな格好でお越しください」
先生からのその一言に導かれるように、僕たち夫婦も背筋を伸ばし、正装をして再び園の門をくぐりました。

本番と変わらない、先生方の「本気」
いざ会場に入って、僕たちは言葉を失いました。
そこには、先週行われたはずの本番と何ら変わらない、ピシッと整えられた式場が広がっていたからです。

座席にはプログラムが置かれ、在園児たちも同じように席についてくれていました。
先生方も皆、式典用の正装に身を包み、カメラマンも待機している。入場曲が流れ出すと、先生に誘導された子供たちが、本番さながらの緊張感を持って堂々と歩いてきました。

「証書を渡すだけ」なんて、とんでもない。
入場から退場まで、何ひとつ妥協のない、丁寧で温かな「二度目の卒園式」がそこにはありました。子供たちのためにここまで準備してくださった先生方の想いに、この時点ですでに鼻の奥がツンと熱くなるのを感じました。

壇上の我が子と、初めての「証書受け取り」
式のハイライトは、卒園証書の授与でした。
壇上に上がった子供が証書を受け取り、そのまま保護者の席まで歩いてきて、親に手渡すという演出です。

実は、長男の卒園式の時はコロナ禍の真っ只中でした。
参列できる保護者は1名のみという制限があり、当時は妻が参加してくれました。そのため、僕にとって「卒園証書を子供から直接受け取る」という経験は、今回が初めてのことだったのです。

「せっかくだから、あなたが行ってきなよ」
そう言って背中を押してくれた妻に感謝しつつ、僕は一歩前へ出ました。

目の前には、少し照れくさそうに、でも誇らしげに証書を掲げる我が子の姿がありました。
小さな手から渡された証書。
その時、子供が口にしたのは「いつもありがとうね」という、シンプルで真っ直ぐな言葉でした。

不意を突かれたような、それでいて心の奥まで染み渡るようなその言葉に、自分でも驚くほど涙が溢れてきました。
室内には、これまでの園生活を振り返る写真や、子供たちが書いた言葉が飾られています。
そのひとつひとつが、僕たちの10年間の記憶と重なり、胸がいっぱいになりました。

10年の月日と、夫婦で交わした「お疲れ様」
末っ子がこの園でお世話になったのは6年以上。長男と合わせれば、ほぼ10年です。
明日からこの園に通わなくなる、先生たちに会えなくなる……。
そう思うと、にわかには信じられないような寂しさが込み上げてきました。

これほどまでに長く、そして深く、僕たちの育児を支えてくれた場所。
先生方の愛情あふれる指導のおかげで、子供たちは本当に優しく、真っ直ぐに育ってくれました。

それと同時に、ふと思ったのです。
「ああ、僕たちも、この長い年月、一生懸命に親をやってきたんだな」と。

式を終え、園を出た後の帰り道。
僕と妻の間には、自然とそんな会話が生まれました。

「私たち、よく頑張ったよね」
「本当だね。お疲れ様」

それは、自分たちを褒め称えるというよりも、お互いの苦労を労い、一つの大きな区切りを共有するような、穏やかで満ち足りた言葉でした。
サイドFIREという生き方を選び、家族との時間を大切に過ごしてきたこの数年間。
その選択の正しさを、子供の成長という最高の結果で証明してもらったような、そんな清々しい気持ちでもありました。

おわりに:周りの縁に生かされて
今回の「二度目の卒園式」は、僕たち家族にとって、本番以上の、一生忘れることのできない宝物になりました。

子供の体調不良というハプニングさえも、こうして「夫婦二人で参列し、僕が初めて証書を受け取る」という特別な機会へと変えてくれた。
そこには、園の先生方の優しさがあり、周囲の理解があり、そして何より、共に歩んできた妻の支えがありました。

自分たちは、本当に周りの人に恵まれている。
感謝の気持ちを新たにするとともに、明日から始まる新しいステージに向けて、また一歩踏み出す勇気をもらった一日でした。

10年間の保育園生活。
たくさんの思い出と、最高のフィナーレをありがとうございました。
僕たちの「親業」の第一章は、これにて無事に完結です。

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